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恋のうた

人はいさ/香ににほひける 紀貫之

1 通釈

人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香ににほひける

→(人の心は変わりやすいものです。)ここに住んでいるかたの心はどうだろう。それはわからないが、梅の花は昔から変わらない香りで咲き誇っていることだなあ

2 官位には恵まれなかった優れた歌人

作者の紀貫之(きのつらゆき)は868年頃生まれたとされています。というのも、さだかではありません。(身分が低かったという理由で、記録があいまいなのです。)

漢学と和歌に優れた人で、905年に御書所預(ごしょどころあずかり)現在の宮内庁書陵部にあたる役職につきました。

その後、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)壬生忠岑(みぶのただみね)紀友則(きのとものり)と共に古今集(初めての勅撰和歌集)の編集に活躍しました。

古今集に添えられた序文『仮名序』は、かなで書かれた初めての和歌を論じたもので、後世になって高く評価されています。

930年に土佐守(とさのかみ)となり、私撰集の『新撰和歌集』を選びました。

934年に土佐守の任を終えて帰京の際に書かれたものが、『土佐日記』です。

三十六歌仙の一人です。

この歌は、小野小町の歌の「いろ見えでうつろふものは世の中の人の心の花にぞありける」をふまえて詠まれたものという見方があります。

小野小町は女ごころのうつろいをつぶやいていますが、紀貫之はそれをうまく踏まえた上で、大人の男女のふわっとした恋愛を詠んでいます。

ずいぶん時間は経ってしまったが、あの人は私のことを思っていてくれるだろうか。あの時と同じ梅の花が同じ香りで咲き誇っているのが、そんな昔の恋愛を思い出させるのだなあ。

3 三字決まり ひとは/花ぞ

「ひ」から始まるうたで、「人」がつくうたは他に、99番の「人も~」があります。それでこのうたは三字決まりになります。

4 覚え方

ひとはかにに

人はカニに?

人は (梅の) 香に

有り明けの/暁 壬生忠岑

1 通釈

有り明けのつれなく見えし別れより 暁ばかり憂きものはなし

→空には有明の月がかかっていた(あなたのそばにもっといたかったけれど、明ければ帰らなければならないという習い)あの時の別れから、暁ほどつらいものはありません。

2 通い婚の習わしが二人を冷たくするのかも

このうたでは、平安時代の通い婚の様子がちらりと見えています。

男性は女性に求婚してOKをもらえると、女性の家にお泊りできる、つまり結婚ということになっていました。

それでも、通いでの夫婦生活なので、明け方太陽がのぼる前には男性は仕事に出かけなければなりませんでした。

今では考えられませんが、宮中に出勤する時間がめちゃめちゃ早かったのです。

そういう理由もあって、男性が帰宅する頃合いは暁のころ、夜が明けそうな時間だったというわけです。

女性だって、つつましい人ばかりではありませんから、いくら大好きな旦那さんでも、面倒くさいな、とかいう時もあったと思います。

それがちょっと態度に出て、つれなく見えることもあったでしょう。

男女の間のことは、デリケートでこんなうたにもなったんですね。

作者の壬生忠岑(みぶのただみね)は三十六歌仙のひとりですが、身分が低いためか、生没年がわかっていません。

41番の「恋すてふ~」の壬生忠見(みぶのただみ)の父で、「古今集」の撰者の一人です。

3 三字決まり

「あ」から始まるうたで、「有」がつくうたは他に58番の「有馬山」があります。「あり」の次の文字で決まるので三字決まりになります。

4 覚え方

あかつきの ありあけ

みかの/いつ 中納言兼輔

1 通釈

みかの原わきて流るいづみ川 いつ見きとてか恋しかるらむ

→みかの原を分けて湧き出て流れる泉川の泉ではないのですが、いつ逢ったというのでしょう?こんなに恋しくおもう気持ちがあふれてくるなんて。(お会いしたことがないのに)

2 どうやら兼輔のうたではないらしい?

このうたは、藤原兼輔(ふじわらのかねすけ)のものとされて「新古今集」に入れられてしまったようなのです。「古今六帖」に3首ならんでいたうちの、最初のうただけが兼輔のもので、そのあとの2首は詠み人知らずだったらしいのです。その詠み人知らずを採用してしまった、というのが通説になっています。

さて、うたに戻りますが、このうたは恋のうたです。

平安時代の恋のはじまりは、まず、会ったことがない、というのが普通でした。

顔も見たことがない、声も聞いたことがない、その人のうわさだけが先に耳に入るのです。

そのうわさでイメージを膨らませるので、ものすごくディフォルメされていくのです。そのイメージがどれだけ実物と近いか、当たりだったりはずれだったり。

「かぐや姫」なんか、まさにこのイメージ先行です。

そして、この、「みかのはら」「いづみ川」「いつみきとてか」のリズム感。

まるでラップのようですよね。

詠み人知らずでも、覚えやすいので、自然に広まったのではないでしょうか。

3 三字決まり みかの/いつ

「み」から始まるうたで、「みか」はこのうたと、49番の「みかき」のうたです。こちらは「みかの」なので三字決まりになります。

4 覚え方

みかのつみき

名にし/人に 三条右大臣

1 通釈

名にし負はば逢坂山のさねかづら 人に知られでくるよしもがな

→逢坂山のさねかずらよ、その名前を持っているならば人に知られないであなたのもとにやってくる手立てがほしいものです。

2 ひ孫の嫁は紫式部

作者の三条右大臣(さんじょうのうだいじん)は本名、藤原定方(ふじわらのさだかた)、873年に生まれ932年に59歳で亡くなりました。

屋敷が三条にあったことから、三条右大臣と呼ばれていました。

定方は会ったことがないと判断できますが、紫式部が後々親族になるという家系になっています。(ひ孫の宣孝が紫式部の夫)

さねかづらは、モクレン科のつる性の低木で、庭木や生垣に利用されています。

きれいな赤い実をつけます。この実は薬効成分を含んでいて咳止めになるそうです。茎の粘液が製紙、びん付け油(男性の整髪料)の原料になるそうです。

そういったことから、”美男かづら”とも言われるそうです。

春夏まっすぐのびていたツルが、秋になると絡み合うという生態から、男女の絡みに例えられるようです。

このさねかづらにうたを結んで愛しい人に届けたのでしょう。

もらった女性はドキドキしてワクワクして逢いに来てくれるのを待っていたことでしょう。

奥様になった方であったかどうかはわかりませんが、この時代は婚姻届がちゃんと制定されておりませんので、想像の人物、ということにしたいと思います。

3 三字決まり なにし/ひとに

「な」から始まるうたで、「なに」までは3首ありますが、「なにし」はこのうただけです。

4 覚え方

なにしに くるよ

今来むと/有明の 素性法師

1 通釈

今来むといひしばかりに長月の 有明の月を待ち出でつるかな

→今すぐ行くよ、とあなたが言ったばかりに(それを信じてあなたの訪れを今か今かと待っているうちに)9月の有明の月と逢ってしまうことになるなんて。

2 親子で天皇に仕えた

作者の素性法師(そせいほうし)は12番目の歌、「天つ風~」https://hyakuninnouta.com/2020/09/11/%e5%a4%a9%e3%81%a4%e9%a2%a8-%e3%82%92%e3%81%a8%e3%82%81%e3%81%ae%e3%80%80%e5%83%a7%e6%ad%a3%e9%81%8d%e6%98%ad/

の僧正遍昭(そうじょうへんじょう)の息子で、生没年はわかっていません。

出家前の名前は、良岑玄利(よしみねのはるとし)。三十六歌仙の一人です。

若いころは宮廷に仕えていましたが、父が僧ということで出家して同じ道を歩むことになりました。

この歌は、旦那様を待っている女性の立場で詠まれています。

結婚の約束を取り付けるまで、男性は必死に足しげくまめまめしく女性のもとに通うのですが、いざ、夫婦となると男性は余裕をもってしまうのか、通う回数が週に一度、月に一度、というふうになってしまうらしいのです。

その待つ側の女性の気持ちはどんなものでしょう。

今から行くよ!って言ったのに、なかなかこないわ。何かあったのかしら。でもきっといらっしゃるにきまっているわ。あんなに熱烈にプロポーズしてくれたのだから。

現代なら、スマホでラインで今どこ?とかすぐ確認できちゃいますけどね。

平安時代の女子は待つことができる器が大きかったのかもしれませんね。

3 三字決まり いまこ/ありあけ

「い」から始まるうたで、「今」がつくのは他に63番目のうた「今は~」があります。こちらのうたは月がかたむいているイメージと、女性のうつむいているイメージを持つといいと思います。

4 覚え方

ありあけ いまこ

ありあけのつきはいま(ど)こ?