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6番~10番

これやこの/知るも知らぬも 蝉丸

1 通釈

これやこの行くも帰るも別れては 知るも知らぬも逢坂の関

→なるほどこれが東国へ旅立っていく人も、それを見送って京へ帰る人も、ここで別れては、また顔見知りの人もそうでない人も、会っては別れ、別れては会うという逢坂の関なのだなあ。

2 初代 琵琶法師

蝉丸(せみまる・せみまろ)は生没年不詳の盲目の僧で琵琶の名手と言われています。逢坂の関のそばに住んでいて、このうたを詠んだことになっています。

現在の場所とされる住所は、滋賀県大津市逢坂。蝉丸神社という神社がそばにあります。神社の鳥居がある場所は石段の階段を上ったところで、本当に峠のようなところです。

こんな山の中にお坊さんだからあえてそこに住んだのか、今では想像できない場所です。

琵琶法師の祖とも言われているようで、かるたの読み札には琵琶を持った絵も見られます。

琵琶法師というと、平家物語の「祇園精舎の鐘~」のイメージがあります。

それと耳なし芳一のお話。平家物語で亡霊に耳を取られたというあの、怪談。

なんだかちょっと怖いイメージがあります。

この逢坂の関で人の行き来する流れを見ていると、関が現在、そこを過ぎると見えてくるのが未来、振り返ってみて見えているのが過去という図式が浮かびます。

人は誰でも幸せを求めて生きていると思います。つらかった過去を捨てて、幸せな未来を手に入れる峠が逢坂の関、なのではないのでしょうか。

3 二字決まり これ/知る

「こ」から始まるうたで、「これ」はこのうただけです。

4 覚え方

これ知る。

これ知る?知らぬ。

そのまんまで覚えやすいですね。

花の色/我が身 小野小町

1 通釈

花の色は移りにけりないたづらに 我が身世にふるながめせし間に

→桜の花の色はすっかり色あせてしまったわ。(わたしの見た目も)日常の騒がしさや恋にまぎれてむなしく暮らして、この降り続く長雨にぼんやり物思いにふけっているあいだに

2 小野一族 NO1の美女

作者小野小町は言わずと知れた世界三大美女の一人です。こう書いてしまうと、この歌が鼻につく感じがしてきてしまうので、不思議です。

おじいさんが小野篁(おののたかむら)と言われていますが、とくにその証拠があるわけではないようです。

まず、小野氏とはどんな一族かといいますと、滋賀県大津市あたりを本拠としていた孝昭天皇(第5代天皇)の流れをくんでいる、つまり、天皇の親戚筋ということになります。

その小野氏のなかで篁は遣唐使の副使に任ぜられたり、文才に優れていた、ようするに頭の回転が速かったために出世していくんです。

そんなすごい人がおじいさんなら孫の小町も歌が上手いだろう、、、となりますよね。

美人で頭も良くて、伝説が生まれないわけがありません。

小野小町は、現在小野とつく場所に生まれたとか、亡くなったとかいう言い伝えがたくさんあります。

歌は、自分の容姿の衰えを嘆いたもの、という見方が強いですが、人の人生ははかないとも取れます。

わたしは、小野小町のこの歌に、やりたいことは今すぐやるべき!時間はあっという間なのよ!と励まされているような気がしています。

3 花はどんな花ですか

平安時代初期までは、花といえば梅の花が一般的でした。桜よりも早く開花する梅の花。白梅や紅梅の丸くほわっとしたつぼみと、開花したときの良い香りが人気でした。それが桜にとって代わるようになるのですが、きっかけとなったのが嵯峨天皇の桜の花見だったと言われています。

天皇のイベントで和歌の世界でも花と言えば「桜」になったのです。

このうたの花の色は桜の花の色、あのピンク色の女性を思い浮かべるようなやわらかな桜の色を指しています。

4 三字決まり 花の/我が身

三字決まりですが、これはうたの内容で覚えやすいと思います。美人薄命のイメージで。

5 覚え方

はなの ながめ

我が庵は/世を 喜撰法師

1 通釈

我が庵は都の辰巳しかぞ住む 世をうぢ山と人はいふなり

→私の草庵は都の辰巳(東南)の方角の鹿が住むようなところにありますが、このように心おだやかに住んでおります。それなのに世の中のみなさんは都を住みづらくなって山(宇治山)に逃げこんだのだろうと言っておられる。

2 仙人になった法師

喜撰法師(きせんほうし)は生没年不詳の人物で、紀氏(きのし)出身の仙人ということで喜撰法師と言われているようです。

紀氏とは、紀伊国(和歌山県あたり)を支配していた豪族の流れの一族です。

喜撰法師は平安時代の嵯峨天皇(さがてんのう)第52代天皇の時代に活躍しました。このころ天候不順で農業は不況、農民は苦しい生活を強いられておりました。のんびりまったり都で生活するのは難しくなっていたわけです。

出家して(俗世間を離れて頭をまるめて)醍醐山(だいごやま)あたりに隠居生活をして仙人になって最後は雲に乗っていなくなってしまったというおとぎ話のような伝説の人物です。

この歌は言葉遊びのような掛詞(かけことば)を使っています。

「しかぞ住む」のしか→動物の鹿と然るべき(このようにという意味あい)のしか

「うぢ山」のうぢ→宇治と憂し(つらいという意味)

テクニックがあるというか、ひとつの言葉にいろいろな思いを託しているというか、ひねりがあるというんでしょうかね。こんな歌のおかげか、本当は紀貫之(きのつらゆき)が喜撰法師なんじゃないか?なんてうわさもあります。

とはいえ、裕福な生活を自ら離れて法師になるということは、それ相応の決意があったのではないでしょうか。

欲から離れることで自分の存在からも離れる、ついには消えてなくなる。すごい生き方だと思います。

3 三字決まり 我が庵/世を

「わが」で始まるうたで、ほかに92番のうた「わが袖」があります。「わがい」「わがそ」三文字まで聞いてから。

4 覚え方

わがいとしのうじやまさん

天の原/三笠 安倍仲麿

1 通釈

天の原ふりさけ見れば春日なる 三笠の山に出でし月かも

→大空を振り仰いではるか遠くを眺めると、月が美しく登っていて、その月は春日にある三笠の山に登ったあの月のかがやきと同じなのだなあ。

2 唐への留学が人生を決定してしまった

安倍仲麿(あべのなかまろ)は698年生まれで770年(73歳)に没。16歳で勉学を認められて、長安に留学を許されます。

遣唐使として選ばれた人たちは、奈良の春日大社で出発前に旅の無事を祈ったそうです。

春日大社といえば朱色の神殿で、鹿がたくさんいる印象深いお社ですね。

その上空に真ん丸なお月様。明るくやさしく仲麿たちを照らしているという画がうかんできます。

この歌は、仲麿が唐の玄宗皇帝に30年お仕えしてようやく日本へ帰国することができるということになり、別れの宴で詠んだといわれる歌です。

30年も海外で過ごすということ、日本と唐の懸け橋として違う国で生きていくこと、容易なことではなかったでしょう。

これから帰る日本、どんなふうになっていることだろう。あの山は、あの月は今も変わらずわたしを迎えてくれるだろうか。いろいろな望郷の気持ちがあふれてきます。

そうして船に乗り込み帰路へ着くのですが、仲麿は暴風にあってしまい、ベトナムへ流されてしまうのです。

命からがら生き延びて、唐へもどり、日本へは二度と戻ることはありませんでした。

3 三字決まり 天の/三笠

物語を知っていればおのずと覚えられますが、あまの→海女のみかさちゃんという女の子をイメージして。

「あ」で始まるうたで、「天」がつくのは他に12番目の「天つ風~」僧正遍昭(そうじょうへんじょう)のうたhttps://hyakuninnouta.com/2020/09/11/%e5%a4%a9%e3%81%a4%e9%a2%a8-%e3%82%92%e3%81%a8%e3%82%81%e3%81%ae%e3%80%80%e5%83%a7%e6%ad%a3%e9%81%8d%e6%98%ad/があります。

4 覚え方

あまのみかさちゃん

かささぎの/白 中納言家持

1 通釈 

かささぎの渡せる橋に置く霜の 白きを見れば夜ぞ更けにける

→かささぎがかけ渡したという天の川の橋にたとえられる宮中の御はしに降りている霜が白くなっているのを見ると、夜もすっかり更けてしまったのだなあ。

2 「万葉集」編さんに務めた

天の川と言えば、夏の夜空を思い浮かべるでしょう。織姫と彦星の一年に一度だけ出会うことを許された七夕の出来事です。

天の川にかささぎが翼を広げて二人の橋渡しになってくれるのです。なんてロマンティック!

わたしの小さい時の記憶なのですが、このお話をアニメーションで見た覚えがありまして、確かかささぎは白かった、、、、ような気がしていたんです。

今回、かささぎを画像検索しましたところ、

「なんか、カラスっぽい?」

黒地に白のわりと小さめの鳥が出てきました。

なんとなくイメージが違ったのですが、こちらが本来のかささぎということで自分を納得させました。

作者の中納言家持(ちゅうなごんやかもち)は大伴家持(おおとものやかもち)と言いまして、718年生まれ、785年67歳で亡くなりました。

万葉集の約一割の数の歌を家持が書いていることから、編さんにかかわっていたのでは?と言われています。

家持は三十六歌仙の一人です。

宮中の御はし→宮中の階段のこと

この歌は冬の歌とされています。霜が降りる時間は季節や温度などで違いますが、だいたい夜明け前。もうまもなく太陽が出てくる、といった時間に、宮中の想い人がいる方角を見て、歌ったのではないでしょうか。

どんな夜を過ごしていたのかは想像のうちにしかありませんが、夜明け前に別れを惜しんでいるという感じがしています。

冬の夜はなんといっても長いですよね。それをもう更けてしまったのだなあ、なんて言っているんです、恋の歌としても良かったのでは?と思ってしまいます。

3 2字決まり かさ/白

背景は天の川のきらきら星。

「か」で始まるうたで、「かさ」はこのうただけです。

4 覚え方

しろきかさ