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31番~35番

人はいさ/香ににほひける 紀貫之

1 通釈

人はいさ心も知らずふるさとは 花ぞ昔の香ににほひける

→(人の心は変わりやすいものです。)ここに住んでいるかたの心はどうだろう。それはわからないが、梅の花は昔から変わらない香りで咲き誇っていることだなあ

2 官位には恵まれなかった優れた歌人

作者の紀貫之(きのつらゆき)は868年頃生まれたとされています。というのも、さだかではありません。(身分が低かったという理由で、記録があいまいなのです。)

漢学と和歌に優れた人で、905年に御書所預(ごしょどころあずかり)現在の宮内庁書陵部にあたる役職につきました。

その後、凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)壬生忠岑(みぶのただみね)紀友則(きのとものり)と共に古今集(初めての勅撰和歌集)の編集に活躍しました。

古今集に添えられた序文『仮名序』は、かなで書かれた初めての和歌を論じたもので、後世になって高く評価されています。

930年に土佐守(とさのかみ)となり、私撰集の『新撰和歌集』を選びました。

934年に土佐守の任を終えて帰京の際に書かれたものが、『土佐日記』です。

三十六歌仙の一人です。

この歌は、小野小町の歌の「いろ見えでうつろふものは世の中の人の心の花にぞありける」をふまえて詠まれたものという見方があります。

小野小町は女ごころのうつろいをつぶやいていますが、紀貫之はそれをうまく踏まえた上で、大人の男女のふわっとした恋愛を詠んでいます。

ずいぶん時間は経ってしまったが、あの人は私のことを思っていてくれるだろうか。あの時と同じ梅の花が同じ香りで咲き誇っているのが、そんな昔の恋愛を思い出させるのだなあ。

3 三字決まり ひとは/花ぞ

「ひ」から始まるうたで、「人」がつくうたは他に、99番の「人も~」があります。それでこのうたは三字決まりになります。

4 覚え方

ひとはかにに

人はカニに?

人は (梅の) 香に

誰をかも/松も 藤原興風

1 通釈

誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに

→誰を友にしたらよいのでしょう。高砂の松でさえ昔からの友人ということではないのです。

2 琴の使い手だった

作者の藤原興風(ふじわらのおきかぜ)は生没年がはっきりわかっていません。

9世紀末~10世紀に活躍した三十六歌仙の一人です。

紀貫之(きのつらゆき)と並ぶ『古今集』の歌人です。

興風は管弦、とくに琴の名手であったそうで、私のイメージとしてはシンガーソングライター。歌も歌えば、音楽も作る、感受性の優れた人だったんですね。

このうたは、年をとっていく孤独感の強調された歌だといわれています。

松と言えば、高砂の松のことを思い出します。みなさんも見たことがあるかもしれません。長寿と夫婦愛を表現した絵で、老夫婦が仲良さそうに並んでいる、その後ろに松が生えている、あの絵です。

これをイメージした後にこのうたを詠んでみると、なんとも一人で生きながらえている自分のみじめさや、寂しさがじわじわ来ます。

きっと、定家もこの気持ちに共感していたのではないでしょうか。

3 二字決まり

「た」から始まるうたで、「誰」はこのうただけです。

4 覚え方

まつもとは だれ?

ひさかたの/しづ 紀友則

1 通釈

ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ

→日の光がのどかな春の日に、どうして落ち着きがなく桜の花はあわただしく散っているのでしょう。

2 紀貫之(きのつらゆき)のいとこ

作者の紀友則(きのとものり)は紀貫之のいとことして知られています。といっても、まずは紀貫之がどんな人物かということですが、最初の勅撰集(天皇の命でつくられる和歌集)の古今和歌集の編さんに関わった、和歌の名手だったということ、三十六歌仙の一人であったということから、とにかく和歌といえば紀貫之というくらいすごい人、ということでしょう。

そのすごい人のいとこ。

お互いにどう思っていたかはわかりませんが、私だったら、すごい人にはまかれろ、という感じになるでしょうね。

さて、古今和歌集が出てきましたが、この編さんに友則も関わっておりました。

完成を待たずに友則は亡くなってしまいましたが、貫之とは違った優美で格調高いうたを詠んだそうです。

この、ひさかたの~は、その優美な感じを定家がひっぱり出したうたといえます。

3 二字決まり

「ひ」から始まるうたで、「ひさ」はこのうただけです。

4 覚え方

しづこ ひさかたぶり

山川に/流れ 春道列樹

1 通釈

山川に風のかけたる柵は流れもあへぬ紅葉なりけり

→山の川に風がかけ渡した柵(しがらみ)がありますが、それは流れようとして流れることのできない紅葉だったのですね。

2 きらりと光る紅葉のうた

作者の春道列樹(はるみちのつらき)は生没年がはっきりわかっていません。

勅撰集(ちょくせんしゅう、天皇の命によってつくられた歌集)に選ばれたうたも、5首と少ないなか、定家がこのうたを選んだのにはよほどの理由があったのではないでしょうか。

わたしには、紅葉がひらひら舞い落ちる、山道、そのそばを流れる細い川がうかんできます。

柵とは、水の流れをせきとめる杭などをいいます。

紅葉がその柵のように細い川に降り積もって、流れを止めようとしている。それは時間の流れのようで、時間も止めることはできないもので。

一瞬の美しさをとどめることはできない。その一瞬を写真のように切り取ったうた。

それがこのうたなのだと思います。

3 三字決まり

「山」から始まるうたはほかに28番の「山里」があります。

「やまが」「やまさ」で三字決まりになります。

4 覚え方

やまがながれ

朝ぼらけ/吉野 坂上是則

1 通釈

朝ぼらけ有り明けの月と見るまでに吉野の里に降れる白雪

→夜がほんのりあけて物がほのかに見えるころ、明け方の月の光かと思われるほどに、吉野の里に降り積もっている真っ白な雪だなあ

2 蹴鞠(けまり)の名人

作者の坂上是則(さかのうえのこれのり)は生没年がわかっていません。

坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)の子孫であるとされています。

田村麻呂と言えば、現在の東北地方にいた蝦夷(えみし)と戦い地域をおさめたヒーローになっています。

蝦夷にしてみればいきなりやってきて、暴力的に支配されてしまったわけですから、悪の根源でしかないわけですよね。

立場が違えば、見方もかわります。

さて、是則ですが、なんと蹴鞠の名人だったという逸話があります。

蹴鞠という遊びは、しかの皮でできた毬(まり)を地面に落とさずけり続けるというもので、今のサッカーでいう、リフティングのようなものですね。

革靴をはいてけり続けるわけですから、技術もそうとう要ると思われます。

そんな遊び(もはや競技?)の名人だったとは、足さばきがすごい人だったんですね。

蹴鞠についてはこちらに詳しく出ています。https://okeihan.net

3 六字決まり

「あ」から始まるうたで、「朝ぼらけ」がつくうたは他に64番目の「朝ぼらけ宇治」があります。

ということで、六字決まりになります。

「あさぼらけ」

「きみがため」

「わたのはら」

で始まるうたはそれぞれ2首ずつあります。

六文字待ちきれずにヤマをかけて取った人が多かったため、「大山札」と呼ばれています。

4 覚え方

よしののあさぼらけのつき